Claude Code × Medical Application

【Claude Code】社内の BI ダッシュボードを AI ダッシュボードに Part0:全体像と設計

1. はじめに — 社内の BI を、AI ダッシュボードに変えてみた

会社には、売上の推移、エリアごとのマッピング、施設や顧客のランキングなど、Tableau や Power BI で作った BI ダッシュボードがたくさんあります。ただ、BI には悩みもあります。

  • 見る人の数だけライセンスが要る
  • 操作を覚えないと、欲しい画面に届かない
  • 作った人がいなくなると、直せる人もいなくなる
社内の BI ダッシュボードの3つの悩みと、話しかけると画面が切り替わる AI ダッシュボード
BI の画面は特定の製品ではなく、一般的な形を模式的に描いたもの

そんな BI を、話しかけると動く AI ダッシュボードに変えてみました。入力欄に「東京都で循環器の症例が多い病院を3年分」と書くと、AI が画面の条件を選び、地図・ランキング・推移・比較の画面が切り替わります。欲しい画面を、操作ではなく言葉で呼び出せます。

質問1:東京都 × 循環器(MDC05)× 3年度の推移。条件のチップと画面のタブに AI の印が付く

社内のデータは記事に出せないので、題材には誰でも使える厚生労働省の DPC 公開データを選びました。令和4〜6年度、6,448の病院です。病院を「顧客の施設」、地域を「営業のエリア」、疾患を「製品」に置き換えると、社内の売上やエリアのダッシュボードと同じ形になります。データの中身と読み方は、参照ページ「DPC公開データとは」にまとめました。

  • 6,448病院令和4〜6年度に一度でも参加した病院
  • 5つの画面地図・ランキング・施設の詳細・3年の推移・比較
  • 約0.1円質問1回あたりの AI の費用(実測のトークン数から計算)
  • 0件AI に渡した件数の数字。数字はすべて照合済みの表から画面が出す

この記事では、何が変わるか、どんな画面か、どういう仕組みかを紹介し、作り方は概要だけを示します。作り方の詳細は、連載の Part1〜Part4 で1つずつ取り上げます(順に公開します)。

2. 何が変わるか

2-1. 4つの価値

  • ライセンスは要りません。 見る人はブラウザで開くだけです
  • URL を送るだけで、同じ画面を共有できます。 年度・地域・疾患などの条件はすべて URL に入ります
  • 出す数字は、公表された値だけです。 件数は前もって照合した表から画面が出し、AI が数字を作ることはありません
  • AI の費用は、1問あたり約0.1円です。 ボット対策・回数制限・月額の上限で、費用が膨らまないようにしています

画面は日本語と英語を切り替えられるので、海外の本社やチームとも同じ画面を共有できます。

2-2. BI の代わりになるところ・ならないところ

BI の代わりになるところ・ならないところ

代わりになるのは、決まった問いの数字を、多くの人に配る部分です。逆に、思いついた切り口で自由に掘る、別のデータとつなぐ、といった分析には、これまでどおり BI や SQL のほうが向いています。今ある BI をすべて置き換えるのではなく、「配る」用途のダッシュボードから置き換えるのが現実的です。

3. 画面と使い方

画面は、地図・ランキング・施設の詳細・3年の推移・比較の5つです。どの画面も、入力欄に話しかけても、条件を手で選んでも動きます。地図以外の画面は CSV に出せます。

  1. 地図。円を押すと病院の情報が出る
    地図と件数の多い上位10施設。市町村の代表点に置いた病院には、その旨を書く
  2. 地域ランキング
    地域ランキング。地域の数字は公表された件数だけの合計で、取りうる上限を吹き出しで示す
  3. 施設の詳細
    施設の詳細。区分の3年度、病床、MDC別の件数の3年度と小さな折れ線、令和6年度の手術別
  4. 施設の比較
    施設の比較。2〜3施設の区分・病床・MDC別の件数を並べる
  5. 3年の推移
    3年の推移。公開データで出せないものは、画面の先頭で理由と代わりの見方を1回だけ説明する
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AI が選んだ条件には、「表示中の条件」のチップに「AI」の印が付きます。違っていれば、閲覧者がその場で手で直せます。直した条件からは印が外れます。

3-1. 地域で比べる

質問2:北海道 × 二次医療圏 × 急性心筋梗塞 × 経皮的冠動脈形成術等(令和6年度)

「北海道の医療圏ごとに、急性心筋梗塞の PCI を比べて」と聞くと、二次医療圏ごとのランキングになります。公表されていない値(10件未満または0件)は0として足さず、地域の数字は公表された件数だけの合計と断ったうえで、取りうる上限を示します。

3-2. 答えられない質問には、代わりの見方を出す

質問4:心不全だけの3年推移は公開データにないため、令和6年度の心不全の件数順に並べ、推移は循環器全体で示す

「全国の心不全の3年推移」は、公開データからは出せません。疾患ごとの件数は令和6年度の分しか公開されていないためです。AI は数字を作らず、「心不全の令和6年度の件数が多い順に病院を並べ、推移は循環器全体で示す」という代わりの見方を選びます。

4. 仕組み — AI は条件を選ぶだけ

AI が選ぶのは、どの画面で、どの年度・地域・疾患を見るかという条件だけです。AI が知っているのは、病名や地域の名前とコードだけ。件数は、前もって照合した表から画面が出します。AI には件数を一度も渡していないので、数字を作れません。

話しかけると動く仕組み。AI は画面の条件を選ぶだけで、数字は照合済みの表から画面が出す

アプリは、Cloudflare に置いた静的なページと、集計済みのデータでできています。質問は Claude Haiku 5.5 に送り、返ってきた条件をサーバーで検査してから画面に渡します。AI の道具は3つだけです。

道具 役割 返すもの
find_codes 言葉をコードにする(「循環器」「心不全」「札幌」→ 画面で選べる値) 名前とコードだけ(件数は返さない)
set_view 画面を決める(画面の種類・年度・疾患・地域・施設と、短い説明) 画面の条件
decline 断る(関係ない質問・指示の書き換え・医療の相談など) 決まった断りの文

サーバーでは、選んだ値が画面の選択肢にあるか、説明文に数字が出ていないかを確かめます。説明文に「〇件」のような数字が出たら、AI が作った数字なので説明文ごと捨てます。

前作の連載「Medicare Part D × Text-to-SQL」では、AI に SQL を書かせました。自由な問いに答えられる代わりに、SQL の誤りがそのまま数字になります。今回の方式は、用意した画面の範囲でしか答えない代わりに、数字の正しさを AI に預けません。

Text-to-SQL と、条件を選ばせる方式の違い

5. 作り方の概要

アプリは Claude Code と一緒に作りました。Claude Code に段階ごとに任せ、段階の区切りごとに人が確かめて判断を入れる進め方です。4つの段階の要点だけを紹介します。

5-1. データ整備(Part1)

取得 → 施設マスタ → 件数 → 二次医療圏 → アプリ用データ → 照合の6段階

公開データは、年度ごとに病院の番号が振り直され、病院の名前は表記がゆれ、地域の区切りも途中で変わります。社内のデータでも、施設マスタや担当エリアの変更で同じことが起きます。年度・施設・地域の不一致をそろえる手順と、名寄せを「そこそこ」で止めた判断を、Part1 で紹介します。

5-2. 数値の検証(Part2)

直す前と直した後の地図。直す前は 305施設の位置が誤っていた

件数の照合も自動のテストも通っていたのに、地図に描いてみると 305施設が海の上や国外に出ていました。表では気づかず、描いて初めて分かった誤りです。照合とレビューで数字の正しさを担保するやり方を、Part2 で紹介します。

5-3. 生成 AI の組み込み(Part3)

自動のテストがすべて通っても、AI の説明文を人が読むと、要らない断りや聞かれていない条件が見つかりました。同じ質問でも答えが揺れる点は、指示文で頼むより、サーバー側の決まりで止めています。AI に委ねる範囲の決め方を、Part3 で紹介します。

5-4. 公開と運用(Part4)

費用を守る仕組み。三重の上限と、止まっても使える画面

誰でも使える公開のデモなので、ボット対策・回数制限・月額の上限の三重で費用を守り、上限に達しても手で条件を選ぶ画面は使えるようにしました。API のキーなどの秘密の値は、Claude Code ではなく人が入れています。費用とセキュリティの管理を、Part4 で紹介します。

6. 社内の BI に当てはめると

今回の作りは、そのまま社内の BI に当てはまります。今ある BI のダッシュボードを、次のように置き換えるイメージです。

  • 営業や現場に配る定型の指標(エリア別・製品別・月次)を、ライセンスなしで URL だけで配る
  • 「このエリアで先月より増えた施設は?」のような問いを、画面の条件に落として答える
  • 数字を作るのは照合済みの集計だけにして、AI は画面の案内役に徹する。数字の正しさの責任は、今の BI と同じく集計の側に残る
  • 画面と集計はコードで持つので、作った人がいなくなっても、Claude Code と一緒に読み解いて直せる

7. まとめ

  • 社内にたくさんある BI のダッシュボードを、話しかけると動く AI ダッシュボードに変えられるかを、DPC 公開データで試した
  • ライセンスは要らず、URL で同じ画面を共有できる。出す数字は公表値だけで、AI の費用は1問あたり約0.1円
  • AI は画面の条件を選ぶだけで、件数には一度も触れない。代わりになるのは「決まった問いの数字を配る」部分
  • 作り方は Claude Code に段階ごとに任せ、人が区切りごとに確かめた。詳細は Part1〜4 で紹介する

次のステップ

アプリは dpc.herzleben.co.jp で公開しています。実際に話しかけて、AI がどの条件を選んだかを「表示中の条件」のチップで確かめてみてください。

今回は、公開データで試しました。社内の BI などを、生成 AI を活かしたツールに変えたいご要望があれば、お問い合わせからお聞かせください。

出典

  • 厚生労働省「令和6年度DPCの評価・検証等に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」(令和8年3月30日公開、同年6月30日データ差替え)。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00203.html
  • 厚生労働省「令和5年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00137.html
  • 厚生労働省「令和4年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_39119.html
  • 厚生労働省「診断群分類(DPC)電子点数表」令和6年度診療報酬改定(令和7年5月20日更新)。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198757_00008.html
  • 厚生労働省「医療情報ネットのオープンデータ」(2026年6月1日時点)。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/newpage_43373.html
  • 国土交通省「国土数値情報(医療圏データ)」2020年度版(CC BY 4.0)。秋田県は第8次医療計画の3圏に組み替えて使用
  • 地図:国土地理院「地理院タイル(淡色地図)」
  • Anthropic「Pricing」(Claude Haiku 5.5、2026年10月24日確認)。https://www.anthropic.com/pricing
  • Tableau は Salesforce, Inc. の、Power BI は Microsoft Corporation の商標です。本記事はいずれの会社とも関係がなく、推奨を受けたものでもありません
  • 本記事の図表・画面は上記をもとに株式会社HerzLebenが加工して作成したもので、国が作成したものではありません