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【データ説明】DPC公開データ — 退院患者調査の構造と読み方

1. このページの位置づけ

連載「社内の BI を AI ダッシュボードに」で題材にする DPC公開データ を、記事本編から切り離して解説する参照ページです。「DPC って何?」「どの Excel に何が入っているの?」「この数字はそのまま足していいの?」に、この1ページで答えられるようにします。

  • 6,372施設令和6年度の退院患者調査に参加した病院。全国の病院の約8割
  • 1,176万件令和6年度(2024年6月〜2025年5月)の退院患者の規模
  • 3,248分類令和6年度改定の診断群分類の数(前回は 4,726)
  • 73.6%MDC別医療機関別件数のセルのうち、伏せ字「-」の割合

掲載した数値は、令和4〜6年度の結果報告ページから 2026年10月23日に取得したファイルで確かめた実測値です。 画面写真も同日のものです。

2. DPC/PDPS — 入院医療の支払いの仕組み

2-1. 1日あたりの定額で払う

DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)は、急性期の入院医療の支払い方式です。2003年に大学病院など 82 の特定機能病院で始まり、いまは全国 1,767 病院(令和6年度)がこの方式で支払いを受けています。

出来高払いが「行った検査・投薬・処置を1つずつ足す」のに対し、DPC は 病名と行った手術・処置の組み合わせ(診断群分類)ごとに、1日あたりの点数が決まっています。ここに入院日数と、病院ごとの係数(医療機関別係数)を掛けたものが包括部分です。手術・麻酔など一部は、これまでどおり出来高で足されます。

1日あたりの点数は入院期間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと長くなるほど下がり、61日目からは出来高になる
心不全(手術なし)の例。入院が長くなるほど1日あたりの点数が下がる

1日あたりの点数は、入院期間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3段階で下がっていきます。上の心不全の例では、8日目までが 2,933点、16日目までが 2,081点、60日目までが 1,769点で、61日目からは出来高に戻ります。長く入院させるほど病院の収入効率は下がるので、在院日数を短くする方向に働きます。退院患者調査が「在院日数の状況」を毎年細かく公表しているのは、この仕組みの効果を見るためです。

2-2. 診断群分類番号(14桁)

支払いの単位になる診断群分類は、14桁の番号で表されます。前から順に「どの臓器系統の病気か(MDC)」「どの病名か」「手術は何か」「処置はあったか」……と絞り込んでいく作りです。

診断群分類番号 050050xx0200xx を桁ごとに分解した図
診断群分類番号の各桁。x はその分類では使わない桁
  • 頭2桁(MDC) は主要診断群で、01 神経系 から 18 その他 まで18区分あります
  • 頭6桁 が傷病名の分類で、令和6年度改定では 506 あります
  • 9・10桁目 が手術です。99=手術なし、97=定義にないその他の手術、01・02…=その病名ごとに定義された手術です

分類の数は改定ごとに見直されます。令和6年度(2024年6月施行)の改定で、全分類は 4,726 から 3,248 に、包括評価の対象になる分類は 4,064 から 2,477 に減りました。年度をまたいで「同じ分類番号の件数」を比べるときは、分類の中身が変わっていないかを先に確かめる必要があります。

3. 退院患者調査とは

3-1. 誰が、何を出しているか

DPC の効果を検証するために、参加病院は退院した患者1人ずつのデータ(簡易診療録にあたる「様式1」や、診療行為の明細にあたる「EFファイル」など)を国に提出しています。これを中央社会保険医療協議会(中医協)の DPC評価分科会が集計し、毎年度の結果を公表したものが 退院患者調査 です。

データを出しているのは、DPC で支払いを受ける病院だけではありません。DPC への参加を準備している病院(DPC準備病院)と、出来高で支払いを受けながら同じ形式のデータを出している病院(出来高算定病院)も含まれます。令和6年度は合わせて 6,372 施設で、全国の病院 8,022(2025年5月末)の約8割にあたります。

退院患者調査に参加する病院を、施設類型と病床規模で分けた横棒グラフ
施設類型 × 病床規模。出来高算定病院の大半は100床未満

施設の構成には偏りがあります。大学病院本院群(82施設)はほぼすべてが500床以上で、出来高算定病院(4,377施設)の約97%は100床未満です。施設の数では100床未満の病院が4分の3(4,799施設)を占める一方、患者の数では DPC標準病院群が過半(54%)を占めます。この偏りが、後で説明する伏せ字の出方を決めます。

3-2. 患者数の規模

令和元年度から令和6年度までの退院患者数を施設類型ごとに積み上げた棒グラフ
退院患者数の推移。令和2年度にコロナ禍で約1割減り、令和6年度は約1,176万件

退院患者は年に1,000万件を超えます。令和2年度はコロナ禍で前年度から約12%減り、その後は少しずつ戻って、令和6年度は令和元年度に近い水準になりました。グラフの「令和5年度」が2本あるのは、令和6年度の報告が令和5年度の分も令和6年度の条件で集計し直しているからです(6-6 で説明します)。

4. 公開されている表

4-1. 結果報告ページ

結果は年度ごとに1ページにまとまっていて、Excel が約90ファイル、集計条件などの PDF が数本並びます。ログインも申請も要らず、誰でもダウンロードできます。

厚生労働省の令和6年度 退院患者調査の結果報告ページ
令和6年度の結果報告ページ。上部に「データ差替え」の注記がある(2026年10月23日撮影)

ファイルは「施設概要表」「参考資料1〜3」「その他参考」に分かれています。どれも病院ごとの行を持ち、告示番号 という番号で施設概要表とつながります。

公開されている表の全体像と、ダッシュボードで使う表
公開されている表の全体像。ダッシュボードは施設概要表と、参考資料2の2つの表を使う

4-2. 元の Excel の見え方

実際にファイルを開くと、次のように見えます。左右にめくって見比べてください。

  1. 施設概要表を開いたところ
    施設概要表。1行が1病院で、告示番号・通番・市町村番号・病床数などが並ぶ
  2. MDC別医療機関別件数を開いたところ
    MDC別医療機関別件数。1病院が「手術 無し/有り」の2行で、横に MDC01〜18
  3. 疾患別手術別集計 MDC05 を開いたところ
    疾患別手術別集計(MDC05)。横に疾患(DPC6桁)ごとのブロックが続き、ほとんどが「-」
  4. 医療圏別MDC患者数を開いたところ
    医療圏別MDC患者数。患者の住所で数えた二次医療圏 × MDC
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どの表も「人が読むための表」で、見出しが複数行にわたり、セルの結合があり、表の下に注記の行が続きます。機械で読むには、この形をほどく作業が要ります(本編の「データを整える」で扱います)。

5. ダッシュボードで使う3つの表

5-1. 施設概要表 — 病院のマスタ

1行が1病院で、告示番号、通番(前年度の告示番号)、市町村番号、都道府県、施設名、病院類型、DPC算定病床数、病床総数などが並びます。令和6年度からは、各病院が公表している「病院指標」の URL も載りました(DPC参加病院のうち 1,758施設)。

列は年度で少しずつ変わります。令和6年度は「地域包括医療病棟入院料病床数」が加わり、様式1の提出月数の数え方も「令和6年6月〜令和7年5月」になりました。年度をまたいで同じ列を使うときは、見出しの名前で合わせます。

5-2. MDC別医療機関別件数 — 病院 × MDC × 手術の有無

病院ごとに「手術 無し/有り」の2行があり、横に MDC01〜18 の件数が並びます。同じファイルに、件数の表と割合の表の2枚のシートがあります。

ここでいう「手術有り」は、様式1に手術の記録がある症例です。ただし、輸血関連の手技(K920 輸血、K920-2 輸血管理料、K923 術中術後自己血回収術)だけの症例は「無し」に数えます。3年度とも同じ形で公開されているので、ダッシュボードの「3年度の推移」はこの表から作ります。

5-3. 疾患別手術別集計 — 病院 × 疾患(DPC6桁)× 手術

疾患(診断群分類の頭6桁)ごとに、手術(9・10桁目)の分岐別の件数と平均在院日数が、病院ごとに並ぶ表です。MDC ごとに1ファイルで、令和6年度は MDC17(精神疾患)のファイルが公開されていません。

分岐には「97(輸血以外の再掲)」という列があります。これは 97(その他の手術)のうち輸血関連の手技を除いたものを 再掲 した内数なので、97 と足すと二重に数えることになります。

疾患別手術別集計(MDC05)を横・縦に流したところ。上の大学病院には数字が並ぶが、下の小さな病院はほぼすべて「-」

この表に載るのは、手術で分類が分かれる疾患だけ です。手術の分岐が定義されていない疾患は、そもそも行がありません。

MDCごとに、疾患別手術別集計に載る件数の割合を示した横棒グラフ
疾患別手術別集計に現れる件数の割合。皮膚(08)は23%、小児(15)は5%

循環器(05)や眼科(02)では9割以上がこの表に載りますが、皮膚(08)は23%、小児(15)は5%しか載りません。この表の合計を「その MDC の内訳」として読むと、大きく読み違えます。ダッシュボードでは「手術の分岐が定義された疾患のみ」と画面に明記し、MDC の内訳グラフには混ぜません。手術名は、DPC電子点数表(令和6年度改定、令和7年5月20日更新)の名称を付けています。

6. 読み方の注意点

6-1. 「年度」は退院した時期で決まる

令和4〜6年度の集計対象期間を並べたタイムライン。2024年4〜5月が空いている
集計対象期間。令和6年度から6月〜翌5月に変わり、2024年4〜5月の退院はどの年度にも入らない

退院患者調査の「年度」は、その期間に退院した患者 の集計です。令和5年度までは4月〜翌3月でしたが、令和6年度は 2024年6月〜2025年5月になりました。2024年6月に施行された診療報酬改定に合わせたもので、その結果、2024年4〜5月に退院した患者はどの年度にも入りません。

もう1つ、集計の対象は「その年度の期間内に入院し、期間内に退院した患者」です。前年度から入院が続いていた患者は外れるので、長期入院の多い病院ほど実際の入院患者数より少なく出ます。ほかにも、在院日数1日以下、24時間以内の死亡、移植手術、自費のみ、などの症例は集計から外れています(参考資料1「分析対象データについて」)。

6-2. 伏せ字「-」は「10症例未満または0件」

MDC別医療機関別件数の実際の行。小さな病院ほど伏せ字が並ぶ
伏せ字の出方。大学病院にはほぼ無く、出来高算定病院の行はほぼすべて「-」

患者を特定されないように、症例数が10未満の病院は、その値が「-」で表示されます。0件も同じ「-」になるので、「-」が 0 なのか 1〜9 なのかは区別できません。

令和6年度の MDC別医療機関別件数では、セルの 73.6% が「-」です。疾患別手術別集計はさらに細かいので、件数のセルの 97.4% が「-」で、数字が見えるのは2.6%だけです。伏せ字は小さな病院と、患者の少ない MDC・疾患に集中します。

6-3. 告示番号は毎年振り直される

令和5年度と令和6年度の告示番号を並べ、通番でつないだ図
札幌市の例。番号どうしでつなぐと別の病院になる(赤)。通番をたどると正しくつながる(緑)

病院を識別する告示番号は、年度ごとに振り直されます。番号は病院類型ごとの通し番号で、頭の1桁が類型を表します(1 大学病院本院群・2 DPC特定病院群・3 DPC標準病院群・9 DPC準備病院・0 出来高算定病院)。途中に病院が1つ加わったり抜けたりすると、その後ろの番号が全部ずれます。

上の図の札幌市の例では、令和6年度に市立札幌病院が特定病院群から標準病院群に移ってきたため、30006 以降の番号が1つずつ後ろにずれました。令和4年度と令和6年度の両方にある番号 5,867 のうち、5,756(98%)は別の病院を指していました。

年度をまたいでつなぐときは、施設概要表の 通番(前年度の告示番号)をたどります。令和6年度は 6,372施設のうち 6,261施設が前年度につながり、残りの 111施設は通番が「-」の新規参加です。

6-4. 合併・分割した病院

年度の途中で合併・分割した病院は、施設概要表の別シート「合併分割医療機関の取扱い」に載っています。令和6年度は次の5件でした。

時期 種類 内容
2024年11月 分割 尼崎中央病院から、尼崎中央リハビリテーション病院が分かれた
2024年12月 分割 府中病院(大阪府)が、泉大津急性期メディカルセンターと府中病院に分かれた
2025年1月 合併 大阪警察病院と第二大阪警察病院が合併した
2025年4月 合併 北光記念病院と時計台記念病院が合併し、カレス記念病院になった
2025年4月 合併 新潟県立リウマチセンターが新潟県立新発田病院に合併した

合併した年度は、同じ告示番号の行が2組(合併前の数か月分と合併後の数か月分)出てきます。病院単位で見るときはこの2組を足しますが、片方が伏せ字だと合計は確定しません。ダッシュボードでは、見えている数字だけを足し、数字の右肩に「+」を付けて取りうる範囲を示します(CSV では「○件以上」)。

6-5. 医療圏別の表は「患者の住所」で数える

都道府県ごとに、病院の所在地で数えた件数と患者の住所で数えた件数の差を示した棒グラフ
所在地と住所の差(令和6年度)。東京・鳥取は流入超、埼玉・山梨・佐賀は流出超

参考資料1の「医療圏別MDC患者数」は、二次医療圏ごとの患者数の表です。名前から病院の所在地で数えた表に見えますが、様式1の「患者住所地域の郵便番号」で数えています。郵便番号が複数の二次医療圏にまたがるときは、それぞれの医療圏に計上されます。

病院の所在地で数えた件数(施設の表の見える件数の合計)と比べると、都道府県ごとに差が出ます。全国では見えている件数のほうが3.4%少ないので、その線を基準に見ると、東京(+5.4%)と鳥取(+5.4%)は周りの県から患者が入ってくる「流入超」、埼玉(−15.1%)・佐賀(−12.9%)・山梨(−11.2%)は県外の病院にかかる人が多い「流出超」です。この表を病院の件数の照合先に使うと、県をまたぐ受診の分だけ合わなくなります。

6-6. 前年度の数字は、翌年の報告で集計し直される

退院患者調査の表の多くは、前年度と当年度を並べて載せています。このとき前年度の数字は、当年度の条件(診断群分類の版など)で集計し直したもの です。たとえば令和5年度の大学病院本院群の件数は、令和5年度の報告では 1,358,219件、令和6年度の報告では 1,366,161件です。

複数年度を並べるときは、どの年度の報告から取った数字かをそろえます。ダッシュボードでは、各年度の数字はその年度の報告から取っています。

6-7. 公開後に差し替えられることがある

令和6年度の結果報告ページには「一部病院の告示番号に誤りがあったため、データ差替え(令和8年6月30日)」という注記があります。公開から3か月後に、ファイルが差し替えられています。

一度ダウンロードしたファイルを使い続けると、差し替え前のデータのままになります。取得した日付を記録しておき、使う前にページの注記を確かめます。

6-8. 施設単位の調査であることの限界

  • 患者を追えない:集計は病院ごとなので、同じ患者が別の病院に転院すると、2つの病院で別々に数えられます
  • 入院だけ:外来での治療(外来化学療法、日帰りの処置など)は含まれません
  • データを出していない病院がある:全国の病院の約2割は調査に参加していません
  • 件数は診療の質ではない:症例数の多さは、その病院の診療の質や優劣を示すものではありません。病院の規模や役割、地域の人口で大きく変わります

7. 分かること・分からないこと

このデータで分かること5つ、分からないこと5つ
このデータで分かること・分からないこと

病院ごとの年間の入院患者数を、疾患と手術の切り口で、全国の病院の約8割について無料で見られるデータは、ほかにありません。一方で、患者単位の経過や10件未満の内訳は、この公開データからは分かりません。そこまで必要なときは、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)の第三者提供や、民間の医療データベンダーのデータを使うことになります。

8. 一次資料

9. まとめ

  • DPC は、病名と手術・処置の組み合わせ(診断群分類)ごとに1日あたりの点数を決める入院医療の支払い方式。退院患者調査は、その検証のために参加病院が出したデータを国が集計したもので、令和6年度は 6,372施設・約1,176万件
  • 病院ごとの件数を、MDC × 手術の有無(3年度)と、疾患(DPC6桁)× 手術(令和6年度)で見られる。誰でも無料でダウンロードできる
  • 読み違えを防ぐ要点は、①年度は退院時期で、令和6年度は6月〜翌5月 ②「-」は10件未満または0件で、0として足さない ③告示番号は毎年振り直されるので通番でつなぐ ④医療圏別の表は患者の住所で数えている、の4つ

次のステップ

社内の BI を「話しかけると動く AI ダッシュボード」に変えられるかを、このデータで試すのが連載の本編です。全体像は「Part0:全体像と設計」で紹介しています。

出典

  • 厚生労働省「令和6年度DPCの評価・検証等に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」(令和8年3月30日公開、同年6月30日データ差替え)。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00203.html
  • 厚生労働省「令和5年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00137.html
  • 厚生労働省「令和4年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_39119.html
  • 同 参考資料1「分析対象データについて」・参考資料2「集計条件について」・令和6年度退院患者調査報告サマライズペーパー
  • 厚生労働省「診断群分類(DPC)電子点数表」令和6年度診療報酬改定(令和7年5月20日更新)。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198757_00008.html
  • 厚生労働省「医療施設動態調査(令和7年5月末概数)」。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m25/is2505.html
  • 厚生労働省「医療情報ネットのオープンデータ」(2026年6月1日時点)。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/newpage_43373.html
  • 本ページの図表は上記をもとに株式会社HerzLebenが加工して作成したもので、国が作成したものではありません。数値は2026年10月23日に取得したファイルで確かめた実測値です