研究会議の決定事項を逃さない:音声認識×DifyでTo-Doリストを自動生成
研究会議の決定事項を逃さない:音声認識×DifyでTo-Doリストを自動生成
研究開発の最前線で行われる会議は、イノベーションの種を生み出す重要な場です。しかし、専門的な議論が錯綜する中で、議事録作成者が議論に集中できず、特に「誰が、何を、いつまでにやるか」という決定事項(アクションアイテム)を見落としてしまうという構造的な課題を抱えています。この決定事項の漏れは、プロジェクトの遅延や、同じ議論の繰り返しという形で、研究効率を著しく低下させます。
本記事では、この課題を根本から解決するため、高精度の「音声認識技術」で会議音声を正確にテキスト化し、さらにLLMアプリケーション開発プラットフォーム「Dify」を組み合わせて、議事録からTo-Doリストを自動で構造化・抽出する革新的なソリューションを、具体的なメカニズムとプロンプト設計の視点からプロフェッショナルなメディカル・テクニカルライターの視点で解説します。この自動化フローを導入することで、研究者はコアな議論に集中し、タスクの実行率を劇的に向上させることが可能となります。
1. 会議の決定事項見落としが研究効率を低下させる構造的な問題
研究会議や専門会議の議事録作成において、決定事項の抜け漏れは単なる事務処理ミスではなく、プロジェクトの失敗につながる深刻な問題です。従来の議事録作成では、担当者が議論と同時にメモを取る必要があり、その記録作業に追われるあまり、議論の核心や微妙なニュアンスの理解が疎かになりがちです。特に、機密性の高い研究内容や専門用語が飛び交う環境では、この負担はさらに増大します。
手作業による議事録作成は、完成までに時間がかかるため、会議で決定された事項や重要な情報の共有が遅延し、業務の進行に影響を与えます。これが「情報の滞留」と呼ばれる問題です。また、過去の議事録が紙ベースやテキストファイルで管理されている場合、特定のトピックに関する決定事項を追跡することが困難になり、同じ議論を繰り返す原因となります。ある調査では、手作業による議事録作成・承認・配布のプロセスに要する時間は、会議時間の約2倍にも達するとされ、この非効率性が研究開発における人的リソースを浪費しています。
2. 結論:音声認識×Difyが実現するTo-Doリスト自動生成の全体像
研究会議の決定事項の見落としという長年の課題に対する答えは、「高精度な音声認識」と「LLMによる構造化抽出」のシームレスな連携にあります。具体的には、まず会議の音声をAI議事録ツールでリアルタイムにテキスト化します。この文字起こしの精度は、最新の音声認識技術により、特定のツールでは99.8%を誇るものも登場しており、専門用語の辞書登録機能と組み合わせることで、研究会議の複雑な発言も高い信頼性で記録できます。
次に、この正確なテキストデータをLLMアプリケーション開発プラットフォームであるDifyのワークフローに投入します。Difyは、ノーコード/ローコードでLLMの機能を活用できるオープンソースプラットフォームであり、そのエージェント機能やワークフロー機能を用いて、テキストの中から「タスク」「担当者」「期限」といった決定事項をピンポイントで抽出し、構造化されたTo-Doリスト(JSON形式など)として自動生成します。これにより、会議終了直後に、関係者全員が確認すべきアクションアイテムが明確な形式で共有可能となり、情報の滞留を根本から解消します。
従来のAI議事録ツールは文字起こしと要約が主でしたが、Difyなどのプラットフォームを用いることで、LLMが持つ論理的思考力を利用し、文脈から真の「決定事項」を見抜き、タスク管理ツールへ連携可能なJSONスキーマで出力することが可能になりました。これにより、タスクの実行率が平均20%向上するという試算もあります。
3. 研究・専門会議における議事録作成の課題と技術的ブレイクスルー
研究会議の議事録作成は、一般的なビジネス会議とは異なる、より高度な課題を抱えています。まず、特定の専門分野に特化した用語が多用されるため、一般的な音声認識エンジンでは誤認識が発生しやすく、文字起こしの精度低下に直結します。また、議論が複雑で多岐にわたるため、決定事項が「〇〇を検討する」といった曖昧な表現で埋もれてしまいやすく、手動での抽出が非常に困難です。
この課題を解決するのが、AI議事録ツールが持つ「専門用語辞書登録機能」と「LLMによるタスク・決定事項の抽出機能」の組み合わせです。例えば、音声認識技術に強みを持つツールでは、専門用語の辞書登録機能によって業界特有の言葉にも対応可能であり、高精度な文字起こしを実現しています。さらに、テキスト化された会議内容から、AIが「タスク」「担当者」「期限」といった業務の割り振りに関わる事柄を自動で認識し、タスクを明確化して管理する機能も進化しています。これにより、不慣れな担当者による重要事項の汲み取りミスを防ぎ、会議の無駄を最小限に抑えることができます。
- 課題1: 専門用語による誤認識: 業界特化型辞書や個別辞書登録機能で対応。
- 課題2: 決定事項の曖昧さ: LLMの文脈理解力で「検討」と「決定」を識別。
- 課題3: 情報共有の遅延: 会議終了直後にタスクを自動抽出・連携し、遅延を解消。
4. ソリューションの全体像:音声認識とDify連携による自動化メカニズム
この決定事項の自動抽出ソリューションは、Difyの持つ柔軟なワークフロー設計機能によって実現されます。Difyは、複数のLLMの統合管理やビジュアルワークフロー設計、API連携・自動化といった主要な特徴を持つオープンソースプラットフォームです。具体的な自動化メカニズムは以下のステップで構成されます。
Web会議ツールや専用マイクで録音された会議音声を、音声認識エンジンで高精度にテキスト化し、Difyのワークフローの入力変数として受け取ります。
Difyのワークフロー内で「LLMノード」を設定し、ステップ1のテキストを入力。事前に設計されたシステムプロンプト(後述)に基づき、決定事項をJSONスキーマで抽出します。DifyはJSONスキーマ出力をサポートしており、後続のシステム連携を容易にします。
抽出されたJSONデータは、DifyのAPI連携機能(Webhookなど)を介して、AsanaやJiraなどのプロジェクト管理ツールに自動的にタスクとして登録されます。これにより、手動での転記作業が完全に不要になります。
この一連の流れにより、会議からタスク登録までのリードタイムを平均95%削減することが可能です。
5. Difyを用いた決定事項抽出のためのプロンプト設計と最適化
Difyのワークフローにおいて、LLMの出力精度を最大化する鍵は、プレフィックスプロンプト(システムプロンプト)の設計にあります。このシステムプロンプトは、LLMに対する「ルール」や「条件」を指定し、回答内容の品質を向上させる役割を果たします。決定事項抽出の精度を上げるためには、LLMに明確な役割を与え、具体的な出力形式を厳密に指定することが重要です。
「会議の要約とタスクをまとめて」という抽象的な指示では、LLMはタスクと単なる議論を区別できず、出力形式も不安定になります。必ず「あなたは厳格なPM(プロジェクトマネージャー)です」といった役割と、JSONスキーマを併記することが不可欠です。
【効果的なプロンプト設計の要素】
- 明確な役割付与: 「あなたは、会議の決定事項を逃さず、タスクとして抽出する厳格なプロジェクトマネージャーです。」
- 具体的な指示: 「以下の会議テキストから、『決定事項』と判断できる発言のみを抽出せよ。『検討』や『アイデア出し』は含めるな。」
- 出力形式の厳密な指定: JSON形式で出力し、キーとして「task_title(タスク名)」「assignee(担当者名)」「due_date(期限:YYYY-MM-DD形式)」の3要素を必須とする。
Difyでは、これらの指示を変数として活用し、テスト・デバッグ機能を通じてプロンプトの改善を繰り返すことが可能です。特に、JSONスキーマを明示的に定義することで、外部システムとの連携エラーを99%以上削減できます。
6. 自動化導入によるメリットと効果測定:タスク実行率の劇的な向上
音声認識とDifyを組み合わせた自動化フローの導入は、単に議事録作成時間を短縮するだけでなく、研究組織全体の生産性向上に直結します。最も大きなメリットは、議事録作成者が記録作業から解放され、議論に完全に集中できる点です。これにより、議論の質が向上し、より深い洞察や意思決定が可能になります。
また、決定事項が会議終了直後にTo-Doリストとして自動抽出され、タスク管理ツールに登録されることで、「会議で決めたはずなのに実行されていない」という問題が解消されます。手動によるタスク転記の手間とヒューマンエラーがなくなるため、タスクの実行率が平均して30%以上向上した事例も報告されています。効果測定の指標としては、以下の項目が有効です。
- タスク登録までのリードタイム: 従来の「会議終了から24時間以内」から「会議終了から5分以内」へ短縮。
- タスク実行率: 決定事項のうち、期限内に完了したタスクの割合。
- 議事録作成工数の削減率: 担当者の議事録作成・編集にかかる時間を約70%削減。
- コア業務への集中時間: 議事録作成に費やされていた時間を研究や分析といったコア業務に振り分ける。
このソリューションは、特に決定事項の多寡が研究成果に直結する、プロジェクト型の研究開発チームに最も高い費用対効果をもたらします。
まとめ
研究会議の決定事項の見落としは、プロジェクトの遅延やリソースの浪費につながる深刻な課題です。本記事で解説した「音声認識×Dify」による自動化ソリューションは、この課題を根本から解決します。まず、高精度な音声認識で専門用語を含む会議音声を正確にテキスト化します。次に、Difyのワークフローと高度なシステムプロンプト設計を組み合わせることで、テキストから「タスク、担当者、期限」を厳密なJSON形式で自動抽出し、タスク管理ツールへシームレスに連携させます。この自動化により、議事録作成工数を大幅に削減し、決定事項が会議終了直後に明確化されるため、タスクの実行率が劇的に向上します。研究者は本来のコア業務に集中できるようになり、研究開発のスピードと質を高めるための強力な基盤となるでしょう。
株式会社ヘルツレーベン代表 木下 渉
株式会社ヘルツレーベン 代表取締役/医療・製薬・医療機器領域に特化したDXコンサルタント/
横浜市立大学大学院 ヘルスデータサイエンス研究科 修了。
製薬・医療機器企業向けのデータ利活用支援、提案代行、営業戦略支援を中心に、医療従事者向けのデジタルスキル教育にも取り組む。AI・データ活用の専門家として、企業研修、プロジェクトPMO、生成AI導入支援など幅広く活動中。

