AI問診で待ち時間短縮!患者・医師双方のメリットを解説
病院での長い待ち時間や、限られた診察時間で症状をうまく伝えられないという経験は誰にでもあるでしょう。こうした医療現場の課題を解決する技術として注目されているのが「AI問診システム」です。AIが患者の症状に合わせて質問を投げかけ、診察前に詳細な情報を収集することで、患者と医師の双方に大きなメリットをもたらします。この記事では、AI問診の仕組みから具体的な効果、導入時の注意点まで、2025年の最新情報を交えて解説します。
この記事でわかること
- AI問診システムの基本的な仕組みと従来の問診票との違い
- 患者と医師それぞれが得られる具体的なメリット
- 導入前に知っておくべき注意点と代表的なシステムの比較
1. そもそもAI問診システムとは?基本的な仕組みを解説
AI問診システムは、患者がスマートフォンやタブレット、院内端末を使って診察前にAIの質問に回答する仕組みです。従来の紙の問診票や固定質問のWeb問診とは根本的に異なり、患者の回答内容に応じてAIが次の質問をリアルタイムで自動生成します。
例えば「咳が出る」と回答すると、AIは「いつからですか?」「痰は出ますか?」「熱はありますか?」といった関連性の高い質問を自動的に深掘りします。これは、AIが膨大な医学論文や過去の問診データを機械学習しているからこそ可能な技術です。
収集された問診結果は医師が使う電子カルテと連携できるよう整理され、医師は診察開始前に患者の詳しい情報を把握した状態で診察に臨めます。
【出典:AI問診とは?メリット・デメリット、Web問診との違いを5つの軸で比較 – MEDISMA】2. AI問診がもたらす変革:患者と医師、双方のメリット
AI問診の導入は、患者と医療機関の双方に具体的なメリットをもたらします。
患者側のメリット:待ち時間の短縮と質の高い対話の実現
待ち時間を大幅に短縮
来院前に自宅で問診を済ませることで、病院到着後の受付や問診票記入の時間が不要になります。実際に、AI問診システムを導入した病院では患者の待機時間が最大30分以上短縮されたという報告があります。
伝え忘れを防ぎ、症状を正確に伝達
診察室では緊張して言いたいことの半分も言えなかった経験はありませんか。AI問診なら、落ち着いた環境で時間をかけて症状を入力できます。AIが症状を深掘りしてくれるため、医師に伝えるべき重要な情報を漏れなく整理できます。
心理的負担の軽減
対面では話しにくいデリケートな悩みも、AI相手なら正直に回答しやすいという心理的メリットがあります。これにより、医師はより正確な情報に基づいて診断できます。
医師・医療機関側のメリット:業務効率化と診断精度の向上
事務作業の負担を大幅に軽減
AIが整理した問診結果を電子カルテにワンクリックで転記できるため、看護師や医師が行っていた問診内容の入力作業が大幅に削減されます。
診察の質が向上し、患者と向き合う時間が増える
医師は診察前に患者情報を詳細に把握できるため、診察がスムーズに進みます。症状確認に費やしていた時間を患者への説明や対話にあてることができ、患者満足度の向上にも繋がります。
疾患の見落としリスクを軽減
AIは入力された症状から関連する疾患の可能性をリストアップする機能も持っています。医師は専門外の疾患や稀な疾患の可能性にも気づきやすくなり、診断精度向上や見落とし防止に役立ちます。
3. 導入前に知っておきたい注意点と今後の課題
多くのメリットがある一方で、AI問診システムにはいくつかの注意点や課題も存在します。
デジタル機器が苦手な人への配慮が必要
スマートフォンやタブレットの操作に不慣れな高齢者にとっては、AI問診がかえって負担になる可能性があります。院内にスタッフが操作をサポートする体制を整えたり、従来通りの紙の問診票と併用したりするなどの配慮が必要です。
導入・運用コストとセキュリティ対策
AI問診システムの導入には初期費用や月額利用料がかかります。また、患者の機微な個人情報を取り扱うため、強固なセキュリティ対策が施された信頼できるシステムを選ぶことが不可欠です。
AIは万能ではない。最終的な診断は医師の役割
AIはあくまで診断を補助するツールであり、最終的な診断を下すのは医師です。AIの提示する情報を鵜呑みにせず、対面での診察を通じて得られる情報と合わせて総合的に判断することが重要です。
4. どれを選べばいい?代表的なAI問診システムを比較
日本国内ではいくつかのAI問診システムが提供されています。クリニックの規模や診療科、連携したい電子カルテの種類などによって最適なシステムは異なります。
| システム名 | 主な特徴 | 推奨されるクリニックのタイプ |
|---|---|---|
| Ubie(ユビー)AI問診 | 全国1,000以上の医療機関への導入実績があり、症状検索エンジンとしても著名 | 幅広い診療科に対応し、ブランド力や導入実績を重視するクリニック |
| メルプWEB問診 | 高いカスタマイズ性で、クリニック独自の問診票作成が容易。オンプレミス型の電子カルテ連携も可能 | 特定の診療科に特化した詳細な問診や、独自の問診フローを構築したいクリニック |
| 今日の問診票 | 約2,000名の著名医師が監修した強固なデータベースを活用。専門外の分野でも診断をサポート | 専門外の患者も多く訪れるプライマリケアを提供するクリニック |
5. AI問診システムの導入はどんなクリニックにおすすめ?
AI問診システムは、特に以下のような課題を抱える医療機関におすすめです。
- 外来患者が多く待ち時間が長くなりがちなクリニック
- 医師やスタッフの業務負担を軽減し働き方改革を進めたい医療機関
- 若年層や働き盛りの患者が多くITツールに抵抗がない層が中心のクリニック
- より質の高い診察を提供し患者満足度を向上させたいと考えているクリニック
一方で、患者層の大半がデジタル機器に不慣れな高齢者である場合や、導入・運用コストに見合う効果が得られるか慎重に判断したい場合は、よりシンプルな機能のWeb問診から試してみるのも一つの選択肢です。
6. まとめ:AI問診は医療の未来を明るくするパートナー
AI問診システムは、患者にとっては待ち時間の短縮と症状の的確な伝達、医師にとっては業務効率化と医療の質の向上という、双方にとって大きなメリットをもたらす革新的なツールです。2022年度の診療報酬改定でAI利用が評価されるなど、国も医療DXを推進しており、AI問診の導入は今後さらに加速していくと予想されます。
日本の医療AI市場は2025年から2033年にかけて年平均36.5%で成長するという予測もあり、2025年以降、AIは医療現場にとってさらに身近なパートナーとなっていくでしょう。もちろん、デジタルに不慣れな方への配慮や、AIの診断はあくまで補助であるという認識は必要です。しかし、これらの課題を乗り越え、AIと人間が協働することで、日本の医療はより質の高い、患者中心のものへと進化していくはずです。あなたの通う病院でも、近い将来、AIによる問診が当たり前になるかもしれません。
【出典:日本の医療AI市場(2025-2033) – Global Research】
株式会社ヘルツレーベン代表 木下 渉
株式会社ヘルツレーベン 代表取締役/医療・製薬・医療機器領域に特化したDXコンサルタント/
横浜市立大学大学院 ヘルスデータサイエンス研究科 修了。
製薬・医療機器企業向けのデータ利活用支援、提案代行、営業戦略支援を中心に、医療従事者向けのデジタルスキル教育にも取り組む。AI・データ活用の専門家として、企業研修、プロジェクトPMO、生成AI導入支援など幅広く活動中。

