【2025年】介護DXで活用できる補助金・助成金一覧と申請の重要ポイント
【2025年】介護DXで活用できる補助金・助成金一覧と申請の重要ポイント
「職員の募集をかけても人が集まらない」「日々の記録や請求業務に追われて、本来のケアに集中できない」
多くの介護事業者が、深刻な人手不足とそれに伴う業務負担の増大という課題に直面しています。この状況を打破する鍵として注目されているのが、ICTや介護ロボットを活用した「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
しかし、介護DXを進める上で大きな障壁となるのが導入コストです。「興味はあるけれど、うちの事業所にそんな予算はない…」と諦めていませんか?
この記事では、そんな悩みを持つ介護事業者の方々のために、国や自治体が提供している介護DXに活用できる補助金・助成金制度を網羅的にご紹介します。この記事を読めば、あなたの事業所に合った制度を見つけ、コストを抑えながら業務効率化とサービスの質向上を実現するための具体的な方法がわかります。
人手不足・業務過多… 介護現場の課題をDXで解決しませんか?
介護現場では、少子高齢化の進展により、慢性的な人材不足が続いています。それに伴い、限られた職員で多くの業務をこなす必要があり、業務負担の増大が深刻な課題です。特に、介護記録の作成、情報共有、介護報酬の請求といった間接業務に時間が割かれ、「本来のケア」に集中できない状況が生まれています。このような課題を抜本的に解決し、職員の負担を軽減しつつサービスの質を向上させる手段として、ICTや介護ロボットを導入する「介護DX」が不可欠とされています。
しかし、新たなシステムや機器の導入にはまとまった費用が必要となるため、特に体力のない中小規模の事業所にとっては、導入コストが大きな障壁となっています。この導入障壁を低くするために、国や自治体は補助金・助成金制度を設けて、介護DXを強力に後押ししています。
介護DXで活用できる代表的な補助金・助成金【2025年度最新動向】
2025年度に向けては、従来の制度の継続・拡充に加え、介護現場の喫緊の課題解決に特化した新たな予算措置が講じられています。自社の導入目的に合った制度を選びましょう。
- 介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)
従来「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が発展的に見直された制度です。介護現場の生産性向上を目的とし、介護ロボットやICT機器の導入を支援します。特に、2024年度補正予算として計上され、2025年度に繰り越される事業(介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策)では、従来の基金メニューよりも事業者負担割合が少なく(75%~80%助成)、導入だけでなく更新時の補助としても活用可能となるなど、拡充的な見直しが行われています。
- 対象経費: 移乗支援、見守りなどの介護ロボット、介護ソフト、タブレット、インカム、Wi-Fi環境整備費用など幅広く対象となります。
- 補助率・上限額: 通常は導入費用の1/2~3/4ですが、2024年度補正予算の事業では75%~80%の助成率が適用されます。
- IT導入補助金(経済産業省)
中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的とした経済産業省の制度で、介護事業者も対象です。業務効率化やDX化に役立つITツールの導入費用の一部が補助されます。2025年度も継続実施が決定しています。
- 対象経費: 事務局に登録されたITツール(ソフトウェア、クラウド利用料)が対象です。介護ソフトなども対象に含まれます。
- 申請枠: 「通常枠」のほか、インボイス制度への対応を支援する「インボイス枠」など複数の種類があり、目的に応じて選択できます。
- 注意点: IT導入支援事業者とパートナーシップを組んで申請する必要があります。
- 人材開発支援助成金(厚生労働省)
従業員のスキルアップを支援するための助成金です。介護DXに関連する研修にも活用できます。
- コース: DX化に必要な知識・技能を習得させる「事業展開等リスキリング支援コース」などがあり、新たな分野への事業展開や企業内のデジタル化に伴う訓練費用を助成します。
- 対象経費: ICT機器の操作研修など、職務に関連した専門知識・技能を習得させるための訓練経費や、訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
なぜ今、補助金を活用したDX化が重要なのか?(メリット)
補助金や助成金を活用して介護DXを進めることには、単なるコスト削減以上の大きなメリットがあります。
- メリット1: 職員の業務負担を大幅に軽減
手書きだった介護記録をタブレット入力に切り替えたり、見守りセンサーを導入して夜間の巡回頻度を最適化したりすることで、日々の業務効率は飛躍的に向上します。これにより、職員一人ひとりの負担が軽減され、より質の高いケアに集中できる時間を創出できます。
- メリット2: サービスの質の向上と利用者の安全確保
見守りセンサーなどのテクノロジーを活用することで、24時間体制で利用者の安全を見守ることが可能になります。また、収集したデータを分析することで、個々の利用者に最適化されたケアプランの作成にも繋がります。これにより、サービスの質が向上し、利用者やその家族からの信頼と満足度を高めることができます。
- メリット3: 職員の定着と人材確保
働きやすい職場環境は、職員の離職率低下に直結します。ICT化によって業務負担が軽減され、残業時間が削減されれば、職員の満足度は向上し、定着率アップが期待できます。「最新のテクノロジーを導入している」という事実は、求職者に対する大きなアピールポイントとなり、新たな人材確保においても有利に働きます。
申請前に知っておきたい注意点
多くのメリットがある補助金・助成金ですが、申請にあたってはいくつか注意すべき点があります。これらの注意点を事前に把握することで、申請の失敗リスクを減らすことができます。
- 注意点1: 交付決定前の発注・購入は原則対象外
多くの補助金制度では、原則として、補助金の交付が正式に決定する前に契約・購入した機器やサービスは補助の対象外となります。必ず交付決定の通知を受けてから発注するようにしましょう。
- 注意点2: 公募期間が短く、手続きが煩雑
多くの補助金は公募期間が数週間から1ヶ月程度と短く、申請には事業計画書をはじめとする多くの書類準備が必要です。公募開始から慌てないよう、あらかじめ情報収集を行い、導入計画、資金計画、申請書類のテンプレートなどを準備しておくことが重要です。
- 注意点3: 申請すれば必ず採択されるわけではない
補助金には予算があり、申請したすべての事業者が採択されるわけではありません。採択の可能性を高めるには、「なぜその機器が必要なのか」「導入によって具体的にどのような効果(生産性向上、残業時間削減など)が見込まれるのか」という事業の必要性や導入効果を具体的かつ説得力のある形で示す事業計画を作成することが鍵となります。
【目的別】どの補助金を選ぶべき?制度の比較
「結局、どの制度を使えばいいの?」という疑問を持つ方のために、代表的な補助金を目的別に比較しました。
| 制度名 | 介護テクノロジー導入支援事業 | IT導入補助金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 介護現場の業務負担軽減、生産性向上 | 中小企業全体の生産性向上、DX化推進 |
| 対象経費 | 介護ロボット、見守りセンサー、介護ソフト、インカム、Wi-Fi整備など(介護特化) | 事務局に登録されたITツール(ソフトウェア、クラウドサービスなど) |
| 管轄 | 厚生労働省(実施主体は都道府県) | 経済産業省 |
| 補助率の目安(2025年見込み) | 75%〜80%(2024年度補正予算による拡充事業) | 1/2〜4/5(申請枠による) |
| 特徴 | 介護現場に特化した機器が対象になりやすい。自治体ごとに要件やスケジュールが異なる。 | 全国一律の制度で、ソフトウェア導入が中心。IT導入支援事業者との連携が必須。 |
【選び方のヒント】
- 介護ロボットや見守りセンサーなど、ハードウェアの導入を考えている場合: → 介護テクノロジー導入支援事業が優先選択肢となります。特に2024年度補正予算の繰り越し事業は補助率が高く有利です。
- 請求ソフトや勤怠管理ソフトなど、バックオフィス業務の効率化を図りたい場合: → IT導入補助金が適しています。介護ソフトの導入に活用されるケースが多く、PC・タブレットの購入費用が対象となる申請枠もあります。
- 職員のDX関連研修費用を補助したい場合: → 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)を検討しましょう。
こんな事業者におすすめ!補助金活用のすすめ
特に補助金・助成金の活用を強くおすすめしたい事業者は以下の通りです。
- 記録・申し送り業務に時間がかかっている事業所: 介護ソフトやタブレット、インカムの導入は、記録時間を大幅に短縮し、間接業務の時間を直接ケアの時間に振り替えることを可能にします。
- 夜間の見守り負担が大きい施設: 見守りセンサーの導入で、職員の身体的・精神的負担を軽減しつつ、転倒や離床などのリスクを早期に察知し、利用者の安全性を高められます。
- コストを理由にDX化をためらっていた小規模事業所: 補助金制度では、小規模事業者向けの優遇枠が設けられていることが多く、少ない自己負担で最新のICT機器を導入できる絶好のチャンスとなります。
一方で、活用が難しい可能性のある事業所は、申請手続きに時間を割く人員がいない事業所や、導入後の運用計画が具体的でない事業所です。補助金は「ただ導入すれば良い」ものではなく、明確なビジョンと運用計画が採択の鍵となります。
まとめ
2024年から2025年にかけて、介護業界を取り巻く環境はますます厳しくなることが予想されます。人材不足がさらに深刻化する中で、テクノロジーを活用した業務効率化は避けては通れない道です。
特に「介護テクノロジー導入支援事業」は、2024年度補正予算による拡充で、最大80%の助成率が適用される見込みの事業が2025年度に繰り越されており、介護事業所にとってはDX化を進める最大の好機です。このほか「IT導入補助金」「人材開発支援助成金」も継続しており、自社の課題解決に合った制度の選択が可能です。
まずは自社の課題を洗い出し、どの補助金が活用できるか情報収集から始めましょう。各省庁や都道府県のウェブサイトで最新情報を確認し、交付決定前の発注を避けるなど、計画的な申請準備を進めることをお勧めします。
株式会社ヘルツレーベン代表 木下 渉
株式会社ヘルツレーベン 代表取締役/医療・製薬・医療機器領域に特化したDXコンサルタント/
横浜市立大学大学院 ヘルスデータサイエンス研究科 修了。
製薬・医療機器企業向けのデータ利活用支援、提案代行、営業戦略支援を中心に、医療従事者向けのデジタルスキル教育にも取り組む。AI・データ活用の専門家として、企業研修、プロジェクトPMO、生成AI導入支援など幅広く活動中。

