ClinicalTrials.gov 治験情報を自然言語で取得するAIワークフロー 概要
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1. 背景・目的
新薬開発や医療機器の臨床研究において、「世界中でどのような試験が実施されているのか」を俯瞰することは、競合分析・仮説探索・KOL調査・市場性評価において非常に重要です。
しかし、臨床試験の情報は複数の国や組織に分散しており、手作業での収集には膨大な時間がかかります。そこで研究者や製薬・医療機器企業が最も多く利用するデータベースClinicalTrials.gov です。
これは NIH(米国国立衛生研究所)と NLM(国立医学図書館)が運営する世界最大級の臨床試験レジストリであり、誰でも無料で利用できます。日本の臨床試験情報も多数掲載され、企業のリサーチ実務に欠かせない存在です。
本シリーズでは、この ClinicalTrials.gov の API を活用し、生成AIや n8n と組み合わせて 臨床試験の情報収集を完全自動化するワークフローを紹介していきます。
2. ライフサイエンスでの使用例(Use Cases in Life Sciences)
ClinicalTrials.gov は、製薬企業・医療機器メーカー・研究者・コンサルティング会社など、多様な現場で活用されます。ここでは、HerzLeben がコンサルティングでよく扱う代表的なユースケースをまとめます。
① 競合分析(Pipeline & Study Landscape)
- 競合他社がどの疾患でどのフェーズの試験を実施しているか
- 試験の規模、被験者数、介入方法、地域分布
- 開発トレンドの把握(例:ASO、mRNA、細胞治療など)
② KOL(Key Opinion Leader)探索
- 各試験のPI(Principal Investigator)や研究拠点から主要研究者を特定
- 特定領域で強い病院・国・研究グループの把握
③ 市場性評価(Market & Feasibility Assessment)
- 特定疾患領域での試験件数の推移
- 治療法の成熟度、未充足ニーズの可視化
- 新規薬剤クラスの実装状況の把握
④ メディカルアフェアーズやRWEの事前調査
- Evidence gap の分析
- 臨床研究計画の競合性チェック
- Academic 主導研究のトレンド把握
⑤ 投資・新規事業のスクリーニング
- 特定領域で世界的に試験が増えているテーマの探索
- 有望なバイオベンチャーの間接的な調査(治験主体から把握可能)
ClinicalTrials.gov は、単なる「試験検索ツール」ではなく、ライフサイエンス領域の情報収集全体を支える エビデンス・インフラとして機能します。
3. n8nとは
n8n は、プログラミング不要でワークフローを自動化できる オープンソースのオートメーションツールです。Zapier や Make.com に近いツールですが、下記の点でライフサイエンス企業や医療DXに向いています。
■ n8nの特徴
- ノーコード/ローコードで複雑なAPI接続が可能
- 自社サーバーにインストールできる セルフホスト対応
- プライバシー・セキュリティ要件の厳しい医療系でも採用しやすい
- OpenAI や Gemini などの LLM 連携が簡単
- JSON や API パラメータの加工が得意
- 分岐処理・ループ処理も直感的に構築可能
■ ClinicalTrials.gov API × n8n の相性が良い理由
ClinicalTrials.gov API は
- query.cond(疾患)
- filter.advanced(フェーズ)
- query.locn(地域)
など複数のパラメータを組み合わせる必要があり、通常は Python/JavaScript を使ったプログラミングが必要です。
この「複数パラメータの条件処理」を n8n はノー/ローコードで扱えるため、
“Slackで文章を送る → n8nがパラメータを抽出 → ClinicalTrials API検索 → AIが要約 → CSV生成 → 結果をSlackに返信”
といったワークフローを、誰でも簡単に構築できるのが大きな魅力です。
■ 医療・製薬企業が n8n を導入する主なメリット
- 定型リサーチ作業の自動化(毎週の治験調査など)
- RPAよりも構築が簡単で柔軟
- データ分析基盤とAPIをつなぐ中間層として使いやすい
- LLMと相性がよく、生成AIアプリを内製化できる
HerzLebenでも、メディカルアフェアーズ・RWE・企画部門向けの 自動調査BotやAIアプリ開発にn8n を頻繁に利用しています。
4. Clinical Trials.govとは

ClinicalTrials.govは、⽶国国⽴衛⽣研究所(NIH)の国⽴医学図書館(NLM)が運営する世界最⼤級の臨床試験登録データベースです。
誰でもアクセス可能で、世界200か国以上からの臨床試験に関する情報(⽬的や参加条件、募集状況、実施機関など)を提供します。
新薬や治療法の安全性‧有効性を検証する試験が中⼼で、試験の実施者が情報を登録‧更新する仕組みです。⽇本を含む各国の試験も多数掲載されています。
5. Clinical Trials.govのAPI
ClinicalTrials.govは、世界中の臨床試験情報を機械的に取得できるAPIを提供しています。このAPIを使うことで、治験の病名や介⼊、地域、フェーズなどの条件を指定して、⼤量のデータを⾃動で抽出することが可能です。
APIは主に「query.cond」や「filter.advanced」などのパラメータで検索条件を指定します。例えば、⽇本における糖尿病の第3相試験を検索するには以下のように記述してコードを書いてリクエストを送る必要があります。
| パラメータ | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| query.cond | diabetes | 対象疾患名(英語) |
| filter.advanced | AREA[Phase]PHASE3 | 試験フェーズ(第3相) |
| query.locn | Japan | 対象地域(英語) |
| filter.overallStatus | RECRUITING | 募集状況(募集中) |
このように検索条件を決めれば機械的に取得が可能になるため、定期的な検索や⼤量検索において便利な⼀⽅で、システム開発やプログラミングの知識が必要です。PythonやJavaScriptなどでHTTPリクエストを送信し、返ってきたJSONデータを解析する必要があります。そのため、⼿軽に利⽤したい場合や、⾮エンジニア向けには、APIを直接使うのはハードルが⾼いです。
そこで、本記事は、n8nのワークフローを⽤いて、APIの利⽤をより簡単に⾃動化する⽅法を紹介します。
6. ClinicalTrials.gov検索フローの全体像
今回、3つの記事にわたってステップごとに構築するワークフローは以下の流れで構成されます。
- Slackで⾃然な⽂章を⽤いてボットに質問を送信
- ⽂章から、⽣成AIが⾃動で検索⽤のパラメータを抽出
- ClinicalTrials.govを使ったAPI検索を実施
- 検索結果を⽤いた要約を⽣成AIが作成
- 検索結果をcsv形式で⼀覧化
- AIによる要約と作成したcsvをSlackに返信

7. ⼊出⼒イメージ
Slack⼊⼒例

Slack返信例
◆要約の返信

◆csvの返信

csvとしても検索結果が保存されるので、単なるようやくにとどまらないリサーチ業務に繋げていくことが可能です。

ヘルツレーベンでは、ライフサイエンス業界に特化したDX・自動化支援を提供しています。
PubMedや学術情報の自動収集をはじめ、Slack・Gmailなどを活用したナレッジ共有の仕組みまで、実務に直結するワークフローを設計・導入いたします。
提供サービスの例
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監修者 株式会社ヘルツレーベン代表 木下 渉
株式会社ヘルツレーベン 代表取締役/医療・製薬・医療機器領域に特化したDXコンサルタント/
横浜市立大学大学院 ヘルスデータサイエンス研究科 修了
製薬・医療機器企業向けのデータ利活用支援、提案代行、営業戦略支援を中心に、医療従事者向けのデジタルスキル教育にも取り組む。AI・データ活用の専門家として、企業研修、プロジェクトPMO、生成AI導入支援など幅広く活動中

